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農業研修生の日常から見る、オランダと日本の違い

2016年3月より、オランダのパプリカ農場で農業研修をしているMahalokoです。今回は農業研修中での学びと、日常生活の中で発見したオランダの有機食品事情についてお伝えします。

箱詰めされたパプリカ

 

多様な外国人と、生活を支える食品店の存在

私の研修先にはオランダ人の他に、ポーランド人、トルコ人、ハンガリー人、ギリシャ人と、研修生としてこれまでアメリカ人、ウクライナ人、ブラジル人、トルコ人等がいる。ワーカーと農場の間には、派遣会社のような会社があり、生産法人によっては、臨時でワーカーを依頼することもあるようだ。私の研修先では各々期間定めての契約を取り交わしているようである。ポーランド人の派遣会社でも少なくとも2社が、片方は寮を持ち、もう一方は研修先のボスが住まいを用意している。隣のWestlandでは、農業法人における労働者の約90%はポーランド人だそうだ。仕事の指示は、英語が基本になるが、中には英語のわからない労働者も存在するため、英語の話せるポーランド人ワーカーが同僚のワーカーに通訳する。

トルコ系スーパーマーケット

トルコ系スーパーマーケット

インドネシアがかつてオランダの植民地であった歴史から、オランダの中国料理やスナックの一部には、インドネシア料理の由来の食品もある。(例;サテー、バミ等)アフリカからオランダに働きに来ている人々向けの食材も、スーパーに置かれている。(例;クスクス)

海外移住者、外国人労働者を支えるスーパーマーケットも、オランダやドイツ系のスーパーマーケットの他に、日本食の材料が手に入りやすい中華系のアジアンマーケットや、トルコ系のスーパーマーケットがある。週に1度開かれているマーケットでは、ココナツやドラゴンフルーツなど、数多くの熱帯果実も見られる。

どのスーパーマーケットでも、青果物はパッキングされている商品と、1個単位で単価のついている商品と、バラで量り売りの商品があり、量り売り商品は紙袋やビニール袋に入れ、売り場内にある秤にその商品の番号を入力し、計量し、シールを出力し、袋に貼り、レジに持って行くか、レジで計量してくれる場合との2パターンがある。

オランダがアメリカに次ぐ世界第2位の農産物輸出国である背景には、外国人労働者の存在と、それを支えるシステムは欠かせないだろう。

 

有機食材・商品の入手のし易さ

オランダには、EKO PLAZA、Estafette、ロッテルダムのGimselなどの有機商品専門店がある。一般のスーパーマーケットにも、ある程度の有機食材はあり、日本の量販店と比べるとそのスペースはやや広く取られていると感じる。一般のスーパーにおける有機野菜の価格は、専門店に比べて安く(他の野菜と同じくらいの値段)、その背景には量販店が有機農家・生産グループとの契約の際に、かなり厳しい値段設定を強いている現状がある。これはオランダに限った話ではない、とドイツで有機食材店を運営している方から伺った。

有機食品専門店Gimsel

有機食品専門店Gimsel

なお、有機農産物・農産物加工品、化粧品、衣料品などのオーガニック商品は、オーガニックであることを証明する認定がいくつかあり、国や団体により基準が異なる。オランダの有機商品専門店で確認した有機認証は主にdemeter(注1)とヨーロッパ有機認証である。ドイツフランクフルトの日本人が運営するオーガニック店1店舗でdemeter以外の認証団体として、IFOAM(注2)の認証を確認した。有機食材の入手ルートは小売店のみならず、宅配もある。

有機食品店には、葛粉やだし昆布など、日本の食材も販売されている。マクロビオティック、ベジタリアン、アレルギー対応の代替食品もよく見られる。

一般のスーパーマーケットでの有機食品等の入手のし易さから、オランダをはじめ、ヨーロッパ諸国の意識の高さが窺える。

 

 

輸出を意識した仕組み、EUである利点

オランダに来て驚いたことの一つに、高速道路が無料であることが挙げられる。また、研修先の法人の入っているネットワークでは箱やプラスチックバッグ、プラスチックカップ、ステッカーなどのは、最終的には(輸出会社)が費用をもつ仕組みになっている。これにも驚いた。

左上から時計回りに赤ハバネロ、黄ハバネロ、Naga jolokia、赤・緑・黄のチリペッパー、Carolina reaper、Jalapeno

左上から時計回りに赤ハバネロ、黄ハバネロ、Naga jolokia、赤・緑・黄のチリペッパー、Carolina reaper、Jalapeno

私の研修先の法人では、スウェーデンの量販店にチリペッパー、ハバネロをはじめ、プラスチック資材で個包装した商品や、3kg箱を計量した形態で出荷していた。物流は、デンマークを通る陸路である。また、Palermoという種類の長いパプリカを、オランダ国内スーパー、ドイツ系スーパー、日本等へ向けて輸出会社を通じて出荷している。日本でよく見られるパプリカは、Belle Pepperと呼ばれるもので、数年前までは生産していたが、このPalermoのマーケットが成長してきているため、切り替えたとのことだ。さらに、より小さなmini belle pepper、Sweetbitesを私の研修先では栽培しており、これもUKをはじめ、フランスや日本の一部量販店向けに出荷している。価格や商品に依るが基本的に年間契約単価である。日本へ出荷するためには、地中海実バエという昆虫の存在があってはならないため、その存在を確認するトラップをハウス内とハウスの外に設置する。また、パッキングした箱にさらにネットをかけ、段ボール紙で底とふたをしっかりし、バンドをした上で出荷する必要もある。他国に出荷するのと比べると、かなり手間をかけている。

長さが特徴のパプリカ・Palermo

長さが特徴のパプリカ・Palermo

また、私の研修先では、パッキングは各ハウスで行っているが、近隣のトマトやパプリカの法人では、収穫物を一つの作業場に集め、一か所でパッキング作業をしている。これは、パッキングにかける労力を分散せず、効率的に行うためだ。

オランダの農産物輸出、とりわけ園芸部門においては、オランダ人の合理的な性格・やり方と、生産法人をサポートするハウス設備関係・各種システムの企業、生産法人と輸出会社のネットワーク、生産アドバイザー、生物資材メーカー、研究・分析機関、GlobalGAP(注3)、人材派遣会社、これらがうまく絡み合って成り立っていると感じる。

 

 

 

 

※なお、ここで紹介したケースは私の研修先法人とその周辺のケースであり、他の法人・近隣では異なる可能性がある。

(注1)demeter・・・シュタイナー博士が提唱したバイオダイナミック農法の製品・作物に与えられる認証。農産物生産・加工・最終包装までの各ステップを通じての厳しい審査ををクリアした製品に与えられるオーガニック認証の一つ。

(注2)IFOAM・・・International Federation of Organic Agriculture Movements(国際有機農業運動連盟)の略。1972年にパリ近郊で設立されて以来、世界中で有機農業の普及に努めてきた国際NGO。

(注3)GlobalGAP・・・ルーツは1997年に始まったEUREPGAPにある。当時、商品の安全性、環境や健康への影響、製造者や動物の安全と福祉に対する消費者の不安の高まりを受けて小売事業者団体が指揮を執って始めた。参加会員が世界に広がり、2007年にGlobalGAPと改称した。現在は100以上の国々が名を連ねる。GAPは、Good Agricultural Practiceの略。

(参考)

Demeter http://www.demeter.net/

IFOAM https://www.ifoam.bio/

GlobalGAP・・・https://www.globalgap.org/uk_en/

by
JAEC海外農業研修生として、オランダパプリカ法人にて研修中(2017年3月まで研修予定)。 神奈川県横浜市出身。 東日本大震災の起きた年の3月に東京農業大学農学部農学科卒業。専攻は作物学、環境保全型農業に関して学ぶ。 在学中、NHKBSハイビジョン「コメ食う人々」第一回に出演(番組制作協力)。 2011年4月~2016年1月、東京の(現在は川崎に本社移転)青果仲卸・青果物専門商社に勤務。 メディカルハーブコーディネーター、ジュニア野菜ソムリエ。豆料理、ハーブティー、蜂蜜が好き。 ”I know what I want. I have a goal, I have opinions, a religion and live”(アンネフランク) “To build a future, you have to know the past.”(アンネの父の言葉) アムステルダムのアンネフランクの家で感銘を受けた言葉。