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ニッチマーケットを狙い続ける

オランダ南部リンブルグ州VeulenにあるWagyu Farmを訪問した。ただ当初から和牛の肥育をしていたわけではない。ニッチマーケットを狙い、新しい製品を市場に浸透させたGerritsen氏から学ぶ。

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畑作からフェタチーズへ転向

Wagyu Farmは1936年に現在の経営者であるBianca Gerritsen氏の祖父がジャガイモや小麦などの畑作農場をはじめたが、間もなく始まった第二次世界大戦で農地に散乱した鉱物を取り除く作業などで土壌の水分量が多くなってしまったため、乳牛、養豚、養鶏の複合農家に転向した。その後Bianca氏の父が1984年にEU生産調整が始まったことを機に牛乳をチーズに加工し、ドイツ国境付近に在住していたトルコ人向けにフェタチーズを生産しブランド化した。口コミが広がって当時は多くのトルコ人が買いに来たという。

 

Wagyuとの出会い

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フェタチーズの生産販売に陰りが見えた2000年、毎年ドイツで開催されるanugaという食品産業の見本市で和牛に魅了され、和牛の導入を検討しはじめた。2002年に100%純血統種をアメリカから輸入し、2006年にはじめて屠殺したが、赤身が主流のヨーロッパでは受け入れてもらえなかった。

 

ライバル商品を使ってプロモーション
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和牛の知名度が低いオランダでのプロモーションは必須であった。しかし和牛に関する情報がなくオランダの方法で肥育をしており、品質を上げるよう努めている最中の肉をプロモーション用に使ってしまうと、かえって印象が悪くなってしまう。そこでライバル製品であるチリやオーストラリアなど他国から輸入した和牛を持参し、オランダのレストランにプロモーションを行って知名度を上げていった。

 

任せられるところは任せる

和牛の知名度が上がるとGerritsen夫妻2人だけでブリーディング、飼料栽培、肥育、卸売、ウェブサイト管理、顧客への直接販売などすべて行うことは難しくなった。そこで2016年からは分業化を行った。
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・肥育、飼料栽培の一部を近隣農家に委託
・ウェブサイトはBeef&Stakeという肉専門のウェブサイトに委託
現在のコアビジネスは同農場のマニュアルに沿って近隣農家が肥育した牛や栽培した資料を購入し、解体、カルパッチョやバーガーなどに加工したり、パッケージングを行いオランダ、ベルギー、ドイツで販売している。2017年2月からは毎週2頭解体できるようなプログラムを作成している。ただし肥育のプロセスに関する情報が不足しているため、未だに日々挑戦であると語る。

 

Wagyu Farmから学ぶこと

1)常にニッチマーケットを狙っているところ。トルコ人用のフェタチーズの生産販売やブームになる前にWagyuの肥育、販売を開始。
2)ライバル商品を使ってWagyuをプロモーション。マーケットが広がれば、ライバル商品も自己商品も売れる、という考えだ。
3)全て抱え込まず、任せられるところは近隣と協業し、自分が得意な分野に全力を注ぐ。

by
愛知県名古屋市出身。 2011年から2016年までオランダ・アムステルダムに在住し、農業、食関係の執筆活動を行うとともに修士課程で農村社会学を学ぶ。現在は浜松で日本と世界をつなぐ農業コミュニケーターとして活動中。じゃがいも好き。