みんなでつくる海外農業情報プラットフォーム

緑の革命が途上国にもたらしたもの

皆様はじめまして!今回Agritersのライターとさせて頂く事なった青年海外協力隊でネパールに派遣されている中村と申します。Agritersのライター陣の中で開発途上国と言われる地域で活動を行う者として、国際協力の農業分野から見えてくる日本の農業の姿について、今後お伝えしていきたいと思います。

 

今回は緑の革命という開発途上国を中心に起こった農業革命から、ネパールがどういう変遷を辿ってきたのでしょうか。その功罪についてお伝えします。

1.緑の革命とは

緑の革命(みどりのかくめい、Green Revolution)とは、1940年代から1960年代にかけて、高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が向上し、穀物の大量増産を達成したことである。農業革命の1つとされる場合もある。”

引用:Wilipedia

作物から種を取り翌年に播種をする固定種では、耐病性などの問題から収量への伸びが期待できない。そのため種苗会社によってF1と呼ばれる交配種を作り売るというシステムを作り上げた。それに付随するように化学肥料・農薬をセットで使うことで安定生産をもたらしたが、土地の疲弊が早いといった負の側面を持ったことから現在では持続可能な農業へのシフトをする地域が増えている。

2.緑の革命がネパールにもたらしたもの

○種子

現在ネパールではローカル種子を含め、日本で販売されているものとほぼ同じようなラインナップの野菜種子・農薬を購入することができる。これは緑の革命がもたらしたものと言っていいだろう。

ネパールの農業において作付けのベースといえるのが「コメ」「トウモロコシ」「ジャガイモ」の3種である。これに各農家でトマト、キュウリ、カリフラワー、玉ねぎなどの野菜を組み合わせて作るケースが多い。米とトウモロコシは中国やインドから輸入されたハイブリッド種の割合が多く、アブラナ科やマメ科など一部の野菜やゴマ以外では、固定品種のみで作付けしている農家は多くはないと思われる。

現場の米農家から話を聞くと、固定種で300~400kg/10a程度の収量なのだが、ハイブリッド種では600kg/10aを超えることも珍しくなく、500kg~600kg/10aと言われる日本のコシヒカリとほぼ同等の収量を挙げることに成功している。

(1aは100m2

トウモロコシのハイブリッド種。インドからの輸入が多い。

トウモロコシのハイブリッド種。インドからの輸入が多い。

 

ほとんどが中国から輸入されているDY28という品種である。ネパールのハイブリット品種が3種存在する

コメのハイブリッド種。ほとんどが中国から輸入されているDY28という品種である。ネパールのハイブリット品種が3種存在する

 

○農薬

農薬は危険性のある成分などもある事から一般的にイメージのいいものではないが、高品質な農作物の生産には欠かせない資材として定着している。

日本では昨今、EU圏で問題になっているネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響への懸念を受けて、農薬の安全性の再評価が始まるなど、これまでより毒性に対して厳格になりつつある。

その反面、途上国ではこうした農薬の毒性に対する規制が弱く、農薬事故も日本に比べると多い。日本では年を追うごとに販売中止になっている有機リン系殺虫剤も、ネパールではまだまだ現役である。

私の活動フィールドであるカブレパランチョーク郡パンチカル市は、野菜の出荷量や農家が持っている耕作面積が他の地域に比べて多く、農業都市と名乗るほどのポテンシャルがある地域なのだが、農薬を適切な時期に散布できていないために産地としてのイメージの悪化が懸念されている。そのため、私の配属先である農業開発事務所ではIPM(Integreted Pesticide Managemen 総合的病害虫管理)の研修を行い、減農薬への取り組みを促している。減農薬への農家の関心はあるのだが、今年だけで数件の農薬基準値超えの野菜が検出された所からもオーガニックやIPMへのシフトチェンジはまだまだ時間がかかると思われる。

 

露地トマトの栽培中。竹の支柱の上にある袋は全て農薬。産地のイメージが悪くなるのでこういうことは一刻も早く止めさせたい。

露地トマトの栽培中。竹の支柱の上にある袋は全て農薬。産地のイメージが悪くなるのでこういうことは一刻も早く止めさせたい。

配属先のパンチカル市を担当している職員に、農薬適正使用の啓蒙を活動にしたいと申し出た所、「わずか30年前に日本のJICA(国際協力機構)やアメリカの機関で農薬や化学肥料を推奨していたのに、なぜ今ごろになってオーガニックにシフトチェンジしたのだ?」と質問された。それは大量生産から質を上げる方向に30年で世界的な流れが変わった事があるのだが、あくまでも先進国が途上国開発をしていく中で都合よく変えていったものだと思う。途上国側からしたら、「なぜこれまでの流れを変えるのだ?」と疑問を抱いても不思議ではない。そうした先進国側と途上国側での考え方のギャップを埋めていくことが、今後の農業開発に必要なことなのかもしれない。

Gawrav by
山形県出身。 7年間種苗会社で営業として勤務し、 2018年3月までの任期で青年海外協力隊ネパール隊員として、減農薬農法の普及に向け活動中。 なお、名前は筆者のネパール名で、Prideという意味 個人ブログ「びすたーらい、びすたーらい」→http://namura.hatenablog.com/