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オランダ農業研修生より~研修環境・実習編

2016年3月末頃より始まった、パプリカ法人での約1年のオランダ農業研修生活。今回は、私の農場における研修生活と、研修先地域についてご紹介したい。

 

酪農とグリーンハウスの同居するMaaslandとその周辺地域

maasland

私の研修している法人のあるMaaslandは、オランダの西南、Zuid-Holland州に位置する地域で、グリーンハウス施設園芸の有名なWestlandと近い。付近で有名な都市はDelft、Rotterdamである。

また、Maaslandは、グリーンハウスよりも酪農の草地が目立つ地域である。高速道路を挟んで反対側に位置するMaassluisには、酪農関係の機械の製造販売を手掛けるLELYの本社がある。この州(province)の政府が、10~15年前に、Maasland、Den Hoorn、Schipluidenを2025年までにこの地域の全てのグリーンハウスをなくし、酪農景観中心としたCentral parkとする計画を立て、現在進行中なのである。既に30の個人・企業が移動し、現在4~5件が残っている。

 

 

自転車で家から10分~15分の場所に、Van Windenという週3回直売している酪農家があり、瓶を持参すればプラスチックボトルやガラス瓶の費用を新たに払う必要なく、スーパーマーケットで販売されている牛乳より遥かに美味しい牛乳が購入できる。ここでは、バターやチーズ、卵、夏にはアイスも販売している。

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農場実習、1日の流れ

road2016年3月29日に始まった農場実習として、他国の研修生とポーランド人ワーカー5人と住むシェアハウスから約6㎞離れた、法人が持つ4つのグリーンハウス(以下ハウス)のうちの1つへほとんど毎日自転車での道を自転車で通った。

春と秋は特に風が強く、風と戦いながら、自転車をこぐ。時にはこの風に雨が混じることもあり、天気予報を確認して雨であれば上下カッパを着て、通勤する。上司も、常に靴下の替えを荷物の中に入れていると教えてくれた。自転車によっては、ギヤのないもの、ブレーキがペダルブレーキのものもある。日によって、同居しているポーランド人ワーカーが同じハウスで仕事する時もあるので、そのような日は彼らの車に同乗することもあった。始業30分~遅くても10分前にハウスに着き、コーヒーを飲みながらワーカーや研修生は始業までの時間を過ごす。

 

労働時間は基本的に、サマータイムは、朝7時から夕方17時まで、ウィンタータイムは朝8時から夕方16時半までであるが、仕事量が少ない時は早く終わり、多ければ少し延びることもある。

休憩は10時からと15時から各15分ずつ、昼食休憩は12時半から30分、ハウスに併設されている休憩所で過ごす。オランダ人はどの休憩時間もサンドイッチや果物、お菓子を食べて過ごしている。人によってパンの消費量は異なるが、多い人で週に6斤食べるという強者もいた。果物はオレンジやリンゴ、洋ナシ、キウイを丸ごと1個、人によって丸かじりで食べる人もいれば、ナイフで切って食べる人もいた。

ハウス内の気温は20度程度あるため、初めてハウスに行った日はツナギを着ていた私も翌日からは温度調整の容易な服装に切り替えた。3月末、4月頃は冬の延長のように朝夕が寒く、ハウス内は初夏~夏のような気温であったので、当時マイアミ出身のハウスメイト、気の毒に滞在3か月の間に3度は風邪をひいていた。

packing

3月末からシーズンの終わる10月下旬~11月上旬までは、主にSweetbites、Chilipepperなどの辛い種類をハサミや手で収穫する作業と、チリペッパーの袋詰め作業、又は箱規格商品を計量し、パレットを作っていく作業であった。「パレットを作る」ということは、トラックが集荷に来る時にすぐ持って行けるように用意することである。午前中に収穫したものを、午後パッキングしていく。私の研修していたハウスには、冷蔵庫はなかったので、収穫した農産物は作業場に台車ごと置かれていた。辛い種のpepperの収穫作業をした日の夜にコンタクトレンズを外した時、地獄のようであったが、振り返ると良い思い出である。Sweetbitesの出荷先によって、果実の選別基準が異なっていたことは興味深かった。例えば、ある出荷先に対しては小さすぎて出荷できなくても、他の出荷先に対しては問題なく出荷できる、という具合である。

 

 

作業時間の記録で効率UP

ハウス内での収穫や誘引などの作業は、各ラインごとに作業が終わると、スマートフォンのような端末に作業者の個人番号・作業項目・ライン番号を入力する。これにより、同じ仕事をしているワーカーごとの仕事の速さを「見える化」している。ところによって、単位時間あたりにどれぐらい収穫したのか、重量を測っているハウスもあるようだ。また、誰がどのラインを収穫したかといったことがわかるので、ライン毎トラブルがあれば追跡も可能だ。この仕組みは、ハウスの運営者がワーカーのする作業としてどのような作業があるか把握しており、どの作業がどれくらいの時間でできるもの、という基準があるからこそ、ワーカーに対する指導や作業方法の改善につながる。これは、日本における一般企業においても、労務管理や社員の仕事への評価方法としても利用できるのではないか。

私の法人では、オランダ人以外にポーランド人、トルコ人、ハンガリー人、エジプト人、他国の研修生がいる。英語の話せない人もいるため、必ずしも共通言語とは言えない。派遣会社から来ているトルコ人とエジプト人はほとんどオランダ語が話せる。ハンガリー人とは英語でコミュニケーションが取れるが、実習の始まった頃はどうやって英語の話せない人とコミュニケーションをとればいいのか困惑した。ある夏場の忙しい時期、休憩時間にトルコ人とポーランド人がそれぞれ自国の言葉で会話していて互いに笑っている様子を見て、どのようにして共感し、笑い合っているのだろうかと、とても面白いと感じた。

パッキング作業時:特に、果実の選別基準が日本と比べて緩い・粗いと感じるが、作業指示者によっても異なるようだと感じたが、最も大きな理由としてはこの点は特に大きな違いであると感じた。選別作業時は目が「選別する目」になり、なかなか作業が早くできなかった。

 

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二級品の商品:チリペッパーの二級品を、ある系統のスーパーマーケットのバイヤーが引き取りに来ていた。日本では生産者の下で加工するが、こちらでは出荷できるものは出荷し、あとは廃棄するようだ。Jalapenoの赤く熟し、裂果しているものは販売できないと聞き、草木染の要領で染色に挑戦した。ゴム手袋をしていても、手がひりひりとしてきた。

 

言葉:オランダはヨーロッパの中でもかなり英語が通じることで知られているが、オランダ人だから、英語が必ず話せる!とは、限らない。スーパーマーケットの店員の中にも、「私は英語に自信がないの」という人がいた。また、道を尋ねたら、英語ではなくオランダ語で説明されたことが数回あった。アムステルダムなどの観光地と田舎町ではそれなりに差があるのかもしれない。

 

私がオランダに来て最も気に入ったものは、オランダの空だ。一つの空に様々な雲が見られ、風が強い日は表情をどんどん変えていく。日本にいた時も空を見るのは好きであったが、オランダの空はまた格別である。出勤時の朝もや、帰宅時の夕焼け。曇天の時ももちろんある。星空も日本より広く広がっている。毎日同じ空ではないので、味わい深い。

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by
JAEC海外農業研修生として、オランダパプリカ法人にて研修中(2017年3月まで研修予定)。 神奈川県横浜市出身。 東日本大震災の起きた年の3月に東京農業大学農学部農学科卒業。専攻は作物学、環境保全型農業に関して学ぶ。 在学中、NHKBSハイビジョン「コメ食う人々」第一回に出演(番組制作協力)。 2011年4月~2016年1月、東京の(現在は川崎に本社移転)青果仲卸・青果物専門商社に勤務。 メディカルハーブコーディネーター、ジュニア野菜ソムリエ。豆料理、ハーブティー、蜂蜜が好き。 ”I know what I want. I have a goal, I have opinions, a religion and live”(アンネフランク) “To build a future, you have to know the past.”(アンネの父の言葉) アムステルダムのアンネフランクの家で感銘を受けた言葉。