みんなでつくる海外農業情報プラットフォーム

農村へテクノロジーを導入する時の注意点ーアフリカ、シエラレオネのケースー

エボラ出血熱発生後のシエラレオネでは、感染拡大を防ぐために5名以上の生産者が集まることが禁止された。以前はカカオ生産者向けに「ファーマーフィールドスクール」を開催し技術の普及や生産指導を行っていたが、不可能になったシエラレオネにオランダFairMatch SupportとWageningen大学が「デジタルファーマーフィールドスクール」の導入を行った。

デジタルファーマーフィールドスクールとは?

エボラ出血熱発生以前に実施されていた「ファーマーフィールドスクール(FFS)」とは1989年にインドネシアから始まった農村へ技術普及を行う際の手法である。参加した生産者はグループでの自主学習を通じて得られた教訓や手法により、自分自身で問題解決ができるようになる。またグループで学習を行うため、農村社会の組織強化や信頼関係構築、共通課題の処理能力が高まる。基本的には政府関係者やNGOの職員が農村に赴きトレーナー/ファシリテーターとして生産者グループに対して実施される。

 

シエラレオネではFFSはオーガニック認証を付与するために活用されていた。付与条件としてトレーナーが圃場で生産者グループの知識や実技を定期的に検査しなければならない。しかし5名以上集まれず、またトレーナーが所属するセンターと農村部の距離は離れており、エボラ出血熱の発生も相まって容易には訪問できない状況が続いた。

 

そこでオランダFairMatch SupportとWageningen大学は現地のJula Consultancyと共に「デジタルファーマーフィールドスクール(DFFS)」の導入を試みた。DFFSはタブレットを使用し、農村の少人数の生産者グループと都市部のトレーナーをつなげ、情報提供やコンサルティングを行いコミュニケーションを図るというものである。

 

農村にテクノロジーを普及する時の課題は?

 

しかしタブレットを使用したDFFSをシエラレオネの農村部に普及するには様々な課題があるのは明白だ。新しい技術やシステムを農村部に普及する時はまずは「ハード面」「ソフト面」「制度・組織面」に分け、課題を洗い出すことが大切だ。その中で特に解決しなければならないものは以下の通り。

 

ハード面

・現地言語(シエラレオネの公用語は英語だが農村部は異なる言語を使用)の教材不足

 

ソフト面

・識字率の低さ
・タブレットを使用したことがない

 

制度・組織面

・タブレットを使用する際のインターネットや充電器等の不足

 

 

課題を元にした改善点

 

DFFSではオーガニック認証を取得する際の手続きや栽培スタンダード、栽培技術や病気に関する情報、適正価格など幅広い分野のショートフィルムを閲覧できる。現地言語適用と識字率の低さを補うために、Fatuという女性のカカオ生産者のキャラクターを作り、字幕とナレーション(現地言語と英語)を作成した。また現地のトレーニングセンターと電話やテキストで直接コミュニケーションをして植物の状態を報告・相談できる機能をつけた。このトレーナーやコンサルタントもキャラクター化した。現地の状況と合わせてイスラム教徒キリスト教の格好をしたキャラクターを作成し、生産者が躊躇いなく相談できるよう工夫している。

 

またタブレットを使用したことがない人のために説明書を準備したが、例えば「タップ」ではなく「1回軽く触る」などわかりやすい表現を用い、できる限り文字ではなく画像や記号で説明書を作成した。

 

インターネットに関してはショートフィルムのダウンロードはネット環境に良い都市部にあるセンターで行い、農村部では基本的にオフモードで使用する。報告・相談時の写真送付時のみインターネットを使用する。

 

テスト導入時にチェックするポイント

 

テスト導入時にチェックするポイントは充電センターの有無等多々あるが、最も重要なのは「農村部の生産者が興味を示し、使用したいというモチベーションの有無」「タブレット使用スキルの可否」である。モチベーションは自ら興味を持つモチベーションと、周りからの影響によるモチベーションの双方を確認した。使用スキルは写真撮影ができるか?タブレットから通話、写真の送付ができるか?フィルムを再生しディスカッションができるか?

 

2016年にシエラレオネで行ったワークショップでは、生産者たちは年齢性別に関わらずDFFSに興味を持ち、キャラクターFatuに「こんにちは」と挨拶するほど親しみを感じていた。そして基本的な使用スキルもグループ内に使用できる人がいたので問題なかった。

 

テクノロジーの普及方法

 

発展途上国の話なので、日本では関係ないと思うかもしれない。しかし、農村部にテクノロジー、特にIT関係のシステムを導入する際には、地域の特徴や年齢・性別構成から課題を洗い出し、改善したプロトタイプを作成し、テスト導入を行い、生産者の反応を見ながら改善を重ねていくことが大切だ。その際に、使い勝手や技術のみではなく「生産者が使いたい!と思うモチベーションを高める」という点を忘れてはいけない。

 

参照:

Wageningen UR, Science Shop, 2016, Kusheh, na minem Fatu, en mi na koko farmer
Hello, I am Fatu and I am a cocoa farmer

by
愛知県名古屋市出身。 2011年から2016年までオランダ・アムステルダムに在住し、農業、食関係の執筆活動を行うとともに修士課程で農村社会学を学ぶ。現在は浜松で日本と世界をつなぐ農業コミュニケーターとして活動中。じゃがいも好き。