みんなでつくる海外農業情報プラットフォーム

どう生きたいですか?ーわたしが、農業研修生という道を選んでー

2016年3月より始まったヨーロッパでの農業研修プログラムを無事に終え、2017年3月29日フランクフルト発チューリッヒ経由の飛行機で、オランダ、スイス、ドイツで研修していた日本人15名は無事帰国した。帰国日翌日に研修報告会と修了式が執り行われた。

今回は、1年の研修を通じて学んだこと、感じたことをお伝えしたいと思う。

研修先の人たちとの集合写真

 

What I’ve done!? 一年の足跡

まず、この一年の研修の中で私がどんなことをしたか、整理する。

1. 語学講習:受け入れ機関の指示で、日本人研修生はオランダ入り後、英語を3週間学んだ。この期間は受け入れ農場とは異なるホストファミリーの下で滞在し、オランダでの生活に慣れる期間である。

2. 農場実習:研修先農場へ移動後、私自身は次のような作業を行った。

  • グリーンハウス(ガラス温室)での収穫作業(Chili pepper, Naga jorokia, Carolina Reaper, Jarapeno, Habanero, snack paprika)
  • その他グリーンハウス内作業:天敵昆虫や微生物資材の設置、肥料のバランスを図るための分析用養液採水、植物の生長を図るための計測(週に1度)、施肥、シーズン後の片づけ~次のシーズンの準備(作替え)
  • 新しいハウスでの準備:ホース用の溝の清掃、各種プラスチックシート敷き、暖房パイプ用ブリッジの設置、暖房パイプの設置、排水用ホースの設置、定植、誘引ひもを整える作業など
  • 作業場での作業:パッキング作業(袋パッキング、プラカップパッキング、箱・コンテナ計量、出荷用パレットの準備(pointed paprika, snack paprika, other peppers)、袋へのシール貼
  • 施肥作業(ドイツのマイスター制のように、資格を有する人しかできないので、上司が傍でついていて、3回ほどさせて頂いた)

3. 研修時訪問企業・展示会

  • 展示会: GreenTech2016(6月)、HortiContact(2月)
  • 企業:7月の夏季旅行中に、同期研修先4法人と私の研修先法人の出荷先の一つである、輸出会社を訪問し、異なる業種(花、酪農、有機)、流通について学んだ。中間期ミーティング時に、6月はAlkmaarのチーズ市を、9月はAaltenプログラムの一環でヤギ農場を訪れ、オランダからフランスへヤギ乳の輸出が増えていることをはじめ、ヤギに関することを学んだ。

 

GreenTechのパンフレット

What I’ve learnt?! 研修から得た「気づき」

日本で農業の研修をすることと、海外で農業の研修をすることは、当然環境が大きく異なる。海外での農業研修は、異なる言語・文化的背景を持つ人々と常に関わり、研修生として働き、生活する。同じ日本人同士でも、育ってきた環境や働く業界・企業により、「当たり前」「常識」は異なる。海外ともなればなおさらだ。国ごと、地域ごとの歴史的背景、民族性、地理的特性、育ってきた各家庭の背景も関わってくる。

この1年の研修を通じて、「農業技術の知見」「現場の管理について」「異文化の常識、コミュニケーション(語学他)」を学び、「農業は、地域に根差したものであること」に、改めて気づかされた。

農業技術の知見、現場の管理に関しては、例えば次のようなことを学んだ。

  • 週に1度、着果1㎡あたりの着果果実数と葉伸長の計測を行い、上司が表とグラフにして、理想的な生殖生長・栄養生長の時、数字の増減は一定になってくる、と教えられた。
  • 研修先法人において、商品の物流・商流について、どのようになっているか。
  • 効率的な仕事をする考え方について
  • 定植苗の初期の日照不足は、全節に着果するはずが一段飛ばしになる。
  • 言語の異なる人々と、如何にコミュニケーションを図るか。

 

各国からオランダに来ている農業研修生との交流イベントの様子

オランダの国土面積は九州と同じくらいであり、そのうちの45%に当たる185万haが農用地である。施設園芸において、1㎡当たりの投資額はスペインより高額であるが、例えば収穫量は2倍近くなる。労働者の作業管理等もIT技術を駆使して「見える化」を図っていると感じた。私の上司が常々言っていたのは、「1つの作業にかける時間が1秒でも短くなれば、100回同じ作業をした時には100秒の差になる。」やり直し・修正をする必要なく、如何に効率的な作業の流れを作れるかは、作業を指示する人、管理者の力量にかかっていると感じた。他のEU参加国との競争の中で勝ち残るために、少ない資源を如何に効率的に利用するか。それを考えるために、オランダ人は数字にうるさくなったのかもしれない。

 

あらゆる人に伝えたい、大切なこと~いつ、何が起きるかわからないからこそ、躊躇わずに、行動しよう。飛び込もう!

  • 教育は、お金はかかるけど、人の成長は未知数。
  • 人生を、自分以外の何かに任せないこと。
  • 悩める時に悩み、他者に言い訳することない人生を。
  • 自分の感覚を大切にしよう。
  • 頑張る人を応援しよう。

私は、東京農大の学生時代に現在横須賀で農業をされていて、過去にこの研修事業に参加された方が教えてくださった海外農業研修プログラムが心に留まっていた。そして、新卒で就職した会社を約5年勤めて退職し、参加した。20歳代のうちに、自分自身で海外に長期的に身を置き、農業をはじめ「現実」を見てきたかった、そして自分の人生に責任を持ちたかったからだ。当時働いていた市場において、オランダという国はパプリカやトマトの輸出国で有名だったので、オランダが受入国になった際、私はパプリカ、トマトで申し込んだ。学生時代主に露地栽培について学んできた私には、施設園芸は新鮮であった。

外国での研修は、受入国の状況により、左右される。法律の改正に伴い、私たちのような研修生を受け入れられなくなることもある。今年は受け入れてくれても、来年は受け入れられないかもしれない。

研修先法人、必ずしも研修生本人の望まない環境であることもある。それゆえ、ある方が私たち研修生に教えてくださった言葉が生きる。「環境の人になれ」。

やりたいことが明確な人、これでなければ、という人に程、望まざる職種や研修環境であることはモチベーションを下げ得ると思う。しかしこの言葉のように、環境に求められる人になること、その環境で踏ん張って、持ちこたえて、何かを掴められること、学びが得られることは、とても価値があり、研修生自身の気づかない成長につながっていると思う。そして、「自分の希望と異なる状況」というのは、就職してから「起こり得る」ことである、海外でそのような場に身を置くのは、学生にとって将来の模擬体験に繋がるだろう、と考える。新卒採用されてから覚える葛藤と、学生のうちにそのような体験をするのとでは違う。実際、「思っていたのと違う」というような理由で入社後数日~1か月で退職する人も市場の業界にあった。

私は、現実の、その国の人々が特に農業に携わる人々がどのように生きているかを中心に見てきたつもりだ。日本と異なる仕組み、商売の環境、人々の考え方(特に時間に対する考え方)、労働力の種類(外国人労働者の多様さ)、各々の価値観、等々。研修生個人の知識や経験に応じて、この滞在期間に何をどれだけ学べるか、個人の知識やある分野への勉強量、語学力により吸収できる量は異なってくると考える。

オランダで出会った農業研修生を訪ねてフィンランドへ。

現役の学生、農業高校生へ

この研修に参加したらきっと、将来の貴重な糧となるはずです。

基本的に農業分野の学問を学んでいる人が対象となるので、現在大学生で農業(野菜、果樹、酪農、畜産、造園、etc)に関心がある方、英語を苦手と思わないで(日本語を苦手と思わないでしょ?!)、学び、是非機会を掴んでください。また現在高校生で農業分野に関心の方も、将来ぜひ参加してみてほしい。

 

by
JAEC海外農業研修生として、オランダパプリカ法人にて研修中(2017年3月まで研修予定)。 神奈川県横浜市出身。 東日本大震災の起きた年の3月に東京農業大学農学部農学科卒業。専攻は作物学、環境保全型農業に関して学ぶ。 在学中、NHKBSハイビジョン「コメ食う人々」第一回に出演(番組制作協力)。 2011年4月~2016年1月、東京の(現在は川崎に本社移転)青果仲卸・青果物専門商社に勤務。 メディカルハーブコーディネーター、ジュニア野菜ソムリエ。豆料理、ハーブティー、蜂蜜が好き。 ”I know what I want. I have a goal, I have opinions, a religion and live”(アンネフランク) “To build a future, you have to know the past.”(アンネの父の言葉) アムステルダムのアンネフランクの家で感銘を受けた言葉。