みんなでつくる海外農業情報プラットフォーム

途上国で猛威をふるう「トマトキハガ(仮称)」が本当に恐ろしい

ナマステ!Agritersのライターで、青年海外協力隊@ネパールの中村です。昨年の3月に派遣をされて、私の活動も1年が経過しました。2年間の協力隊活動も折り返しを過ぎまして、慣れてきた部分もある一方、目新しいことも多くなくなったせいか、緩慢に過ごす事もあり、もう少し1日1日を大切に過ごしたいと日々感じています。

 

今回は日本には無い害虫で、ネパールでも猛威を振るい始めている「トマトキハガ」という虫について、どんな被害があり、私が配属先とどういった対策を行っているかお知らせしたいと思います。

トマトキハガ(仮称)とは?

学名:Tuta absolutaで知られるチョウ目キハガ科の虫で、欧州・アフリカ・中南米を中心に被害が確認されている。ネパールでも最近になって確認されるようになった。特徴はトマトの葉の中に潜伏し、食害を繰り返しながら卵を産み付け、被害が大きくなると葉に留まらず、果実の中まで食害することで、トマトの品質が著しく落ちてしまうという難防除害虫である。

写真中央部の葉が白くなっている部分にトマトキハガが潜伏している

被害を受けたトマト。果実に穴を空けて中を食害する。一見すると食害が確認できない部分もある

現在行っている対策

私の配属されている郡農業開発事務所では、トマトキハガの事を詳しく教えるためにポスターを作成し、配布している。このポスターでは、トマトキハガの幼虫や成虫の写真を掲載し、対策としてフェロモントラップ(フェロモンで害虫の雄を誘引するもの)の紹介を行い、農家への啓発を行っている。

啓発の様子

ネパールではトマトキハガ用のTLM-LUREというフェロモントラップ を使用することで、長期的に害虫を減少させる効果があると期待されているが、果たしてそれだけで防除できているかについては疑問が残る。

そこで私は配属先に防除方法について「育苗期~定植初期にかけての灌注処理の普及」について提案を行い現在、実験を行っている最中である。

「灌注処理」とは・・・一般的な農薬の使用方法として、 噴霧器を使用した「散布」という方法があるが、きちんと葉の裏や茎に掛けないと薬剤が浸透せず、害虫が死なないといったデメリットもある。そういったデメリットと補完するために、定植前に薬剤を土壌に散布させる事で、根から薬剤を植物体に染み込ませる「灌注処理」という技術がある。

具体的には以下の図表のようになっている。

出所:筆者作成

元々、こういった技術はネパールには無かったものなので、葉の中に潜む「トマトキハガ」には有効ではないのか?と考えた。

クロラントラニリプロールという成分を含む農薬は根から薬剤を吸い上げる力が非常に強い ので、こうした処理方法で行うことができる。また安全性について、効果が約 現在、配属先でこの薬剤の処理を実験しており、下記の写真の様な結果が出ている。

写真右の苗が灌注処理を行い、写真左が無処理のものである

この灌注処理を今年3月28日に行い、約1ヶ月後の状態だが、無処理については赤丸で囲っている通り、4ヶ所のハモグリバエ(トマトキハガと同様に葉の中に潜む害虫)が確認されており、灌注処理については一定の効果が現れている。

今後に向けて

灌注処理という農薬散布方法は「簡便」「健康への被害が少ない」などのメリットがある。

この方法だけではトマトへの虫の防除は難しいので、生育時期の農薬の散布は欠かすことが出来ない。その薬剤もこちらできちんと組み立てて、1作のローテーションをある程度確立できるようになればいいなと思っている。

日本の農家へもこうした指導は難しいので、ネパールではなおさら大変になる。日本人農家に対してよりも分かりやすく説明する技術がこれから求められるだろう。

Gawrav by
山形県出身。 7年間種苗会社で営業として勤務し、 2018年3月までの任期で青年海外協力隊ネパール隊員として、減農薬農法の普及に向け活動中。 なお、名前は筆者のネパール名で、Prideという意味 個人ブログ「びすたーらい、びすたーらい」→http://namura.hatenablog.com/